令和元年10月24日
愛佳交通株式会社

特集『たった一台の異端車(その1)』
本日も、愛佳交通をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
さて、今回の特集は『たった一台の異端車(その1)』というタイトルですが、愛佳交通に1台が在籍する、ある路線バス車両をご紹介します。定期的に乗合路線の運用に就くことは少なくなり、お目にかかれる機会は少ないですが、今でも"教習車"などとして使用されています。




■当該車両について
愛佳交通美海営業所に、そのバスは所属しています。この車両(車番:E14101 日産ディーゼルU-UA440LSN 1992年製)は、旧愛佳中央交通から現在の愛佳交通に経営移管された後、車両不足に伴い、親会社である東静高速鉄道(現 東静ホールディングス,静岡県沼津市)を通じ、その完全子会社である東静バス(静岡県沼津市)から譲渡を受けた車両の1台でした。嘗てJR東海バス及び井内バスで使用され、中古バスとして放出されていたものを東静バスが購入し、沼津営業所管内で使用。その後、東静バスから何台かの車両が愛佳交通に譲渡されることとなり、その中の1台に、この車両も含まれていたのです。
愛佳交通の車両となった後は、愛佳交通の基幹営業所である美海営業所に配備され、引き続き路線バスとして使用。特に乗客の多い路線を主に運行し、その大型車体での収容人数を武器に、他の車両とともに活躍を続けていました。その後、愛佳市近辺の路線を新たに発足させた南牧営業所に移管。この際に転属しそうなものでしたが、この車両が転属することはなく、路線移管後は比較的のんびりとした運用へと変化するのでした。
現在の美海営業所は貸切バス事業などの主軸を置き、乗合バス車両の予備車が多く所属する営業所となります。他の営業所では収容できる車両数などが少なく、重要検査などで期間の長い運用離脱をする車両の"代車"は、主にこの営業所所属の車両をあてがうことになったためでした(後は第2拠点であり、整備工場を併設している朝倉営業所)。

■次第に活躍の機会が減少する
世はバリアフリーの時代と言われる時代。路線バスには次第に"バリアフリー"を騒がれるようになります。愛佳交通としての経営が次第に安定してくると、旧愛佳中央交通からの引継車及び、発足当初の車両不足に伴う補填のため東静バスから譲渡された車両を中心に、老朽車両の置き換えを進めるという話が浮上し始めます。特に、愛佳市を初めとした市街地路線での置き換えが急務であり、沿線自治体からの補助などを得る形で、大型ノンステップバスなどの大量増備に踏み切りました。それらの車両が就役次第、既存車両の淘汰は進むことになります。この車両も例外ではなく、たった1台しかない異端さなども手伝って、廃車候補の1台に上がってしまいます。
しかし、この車両のみは廃車候補のリストから外され、車検を通されることになります。

■一時のピンチヒッター
大型ツーステップバスであるこの車両が、他の車両を差し置いて車検を通し、延命された理由…。それは"タイミング"と言わざるを得ません。この車両の廃車が検討された時期、他の営業所でも大型バスを中心に路線バスのノンステップ化を計画していた。その際、一部の新車両の納入が遅れており、置き換え予定の車両が車検期限を迎えてしまうことが判明したのだ。
そのため、状態が比較的良い車両を選んで車検を通し、つなぎとして継続使用することとしたのだ。その中の1台に選ばれたこの車両は、車検を通された後、葉桜営業所に貸し出し。半年間使用された後、当初より計画されていた新型車両と交代。ピンチヒッターとしての役目を終えて、美海営業所に戻りました。

■美海営業所の名物車両に
一時期は車両のバラエティに富み、良く言えば『走る路線バス博物館』であるが、悪く言えば『おんぼろバスの巣窟』とも言われていた、発足当時の愛佳交通。特に美海営業所はその傾向が強かった。これは、この営業所が同社路線バスの基幹営業所であった事や、共通仕様の予備車の多くが配備されていたからであった。しかし、経年及び老朽化により、旧愛佳中央交通の引継車及び東静バスからの譲渡車を中心に、美海営業所及びほかの営業所でも廃車が進行。既に1992年製車両は大半が廃車された中で、唯一の生き残りとなり、年式だけ見れば最古参車両となっていたのである。
その他にも、愛佳交通の設立が発表された際、その会見の場にて新たなコーポレートカラーを披露するべく展示された車両であったこともまた、特別視されている理由とされている。現在では予備車扱いとなり稼働機会は少なくなった同車ですが、それでも多客期の臨時便や、運転士の訓練などに使用されている。また、年に何度か開催されるイベントの際に展示車両として並ぶことも多く、時にはイベント会場と最寄り駅を結ぶシャトルバスに使用されたりするなど、今でも比較的目立つ車両でもある。


△愛佳交通南牧営業所に所属していたいすゞ+富士7Eの路線バス(U-LV324L)。元愛佳中央交通車両の中では大多数を誇った車両だったが、つい最近になって全車が廃車された。

■今後について
稼働機会は少ないものの、一般乗合路線に他の車両と混ざって運用されたり、前述のとおり多客時の臨時便や、運転士の訓練などで使用されている。これは担当車制度により、1人の主任運転士(新人運転士に指導を行ったり、既に乗務している運転士の技量審査などを行い、改善するべき点を指摘する。指導予定などがない時には、他の運転士と共に、バスの乗務にあたる)がほぼ専用に使用し始めた事による。当面廃車する予定はなく、他の車両と混じって運用に供するとされている。最近では車庫に佇む機会は多いものの、創設期より走り続ける車両の1台として、今日も活躍を続けている。

筆者の紹介
名前:森村なぎさ(もりむら なぎさ)
出身:南牧県美海郡茜ヶ崎町
役職:本社広報課長
略歴
1993年:旧愛佳中央交通に事務系職員として入社
2007年:愛佳中央交通を退社。愛佳交通へ移籍。
2008年:自動車部広報課長就任。
2019年:本社広報課長就任。
*このページに記載してあることは、全て架空です*
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